What's 耐震Column

vol. 5

2018年8月10日 公開

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耐震住宅を建てたいけれど費用はどのくらい?

今回は耐震住宅を建てるための費用について解説します。

誰でも、自分の家は地震に強い家にしたいと考えていると思います。しかしそのための費用が一体どのくらいになるのかという問題は、そういう方にとってとても重要なテーマだと思います。これについては様々なケースが想定されるので一律で語ることは難しいのですが、できるだけわかりやすく、ひとつひとつ説明していきたいと思います。

「構造計算」にかかる費用

まずは、これまで何度も取り上げたことですが、「構造計算」を行うためのコストについて解説します。

「構造計算」は建築の構造の専門家が、専用の構造計算ソフトなどを使用して行います。よって当然ですがそのための一定の費用はかかります。その費用については、建物規模やその構造の難易度などによって変わっていきますが、一般的に100m2前後の木造住宅であれば、基礎と建物を含めて15万~20万円程度です。

建物の面積が大きくなれば費用はその割合に応じて増えていきますし、スキップフロアや極端に屋根が斜めなどの変形した建物の場合はもう少し高くなるかもしれません。いずれにしても、耐震住宅を建てるための大前提として考えれば、それほど高い費用でありませんので、是非とも、これは必要経費として捉えてほしいと思います。 

 

「基礎にかかる費用」

そして、主要の建築にかかるコストということになります。
まずは基礎です。基礎は主に鉄筋とコンクリートから構成されます。鉄筋にも太いものと細いものがありますし、構成する本数も様々です。地盤の強度や建物からかかる重力などを前述の構造計算を行ったうえで基礎は決定されます。コンクリートの量が多かったり、太い鉄筋を多く使った方がコストはかかりますが、基礎自体の強度は高くなります。

「構造躯体にかかる費用」

次に基礎の上に建つ建物の構造躯体です。
ここでポイントとなるのが使われる構造部材(木造の場合は木材)です。つまり、柱や梁といった建物の骨格を形成する材料です。これが、どんな木材を使っているかで耐震強度は大きく変わりますし、同時にコストも変わります。木材は主に以下の3種類に分かれます。

 

1) 自然の木を製材しただけの乾燥をしていない「グリーン材(未乾燥材)」
乾燥もされていないので、強度は不明で施工した後にねじれなどが起きやすい

2) 自然の木をそのままで一旦乾燥した「乾燥材」
乾燥しているのでねじれなどは起きにくいが、強度は不明なので耐震住宅を建てるうえでは不安要素が高い

3) 自然の木を乾燥した後に強度を計算して加工した「構造用集成材」
しっかり乾燥して、強度も安定し数値化できている部材で、構造計算する上でも最適な部材

 

耐震住宅を建てるには、できれば3の「構造用集成材」を使ってほしいところです。しかしながら、コスト的に高い順番で、321となります。

また、その部材の寸法も建物によって異なります。一般的には柱が3.5寸角(105mm)と4寸角(120㎜)となり、それは表面積で4寸角の方が1.3倍大きくなります。同時に梁の幅も増えますので、全ての部材を4寸(120㎜)のサイズにすると、材料の立米数が増えるので、その分コストも増えるということになるわけです。もちろん、105㎜サイズよりも120㎜サイズの方が強度が高くなるということは言うまでもありません。

木材については他にも、構造の床や耐力壁に使う「構造用合板」があります。これは厚さもそうですが、「国の機関に認定された合板」であるか確認が必要です。住宅の木材の規格としては日本農林規格(「JAS規格」)が最も信頼性が高いので、そこで「1級合板」として認定された合板をぜひ使ってほしいと思います。

そして、最後に接合金物となります。
現在の木造住宅では、ほとんどが柱と梁、柱と基礎を接合する部分に何らかの金物を使っています。これも2種類あります。

1) 基本は木材を仕口加工で接合し、補助的な金物を使用する
補助金物なのでそれほど強度は期待できず断面欠損も解消しない

2) 強度の高い接合金物を使って、木材同士や木材と基礎を強固に接合する
断面欠損がなく、それ自体が耐震の強度を保つ役割を担っている

優れているのは当然ですが費用は少々高いものになります。どの程度の差があるのかは一概に言えませんが、1棟当たり30万円~40万円程度でしょうか。

これらを総合して考えると、耐震住宅にするためのコストとしてどれくらい考えればよいかということが見えてくると思います。

 

「どんな家に比べて」どれだけ高くなるかということになるのですが、例えば「構造計算をせずに、貧弱な基礎に105㎜の寸法の未乾燥の木材とグレードの低い合板、最低限度の補助金物を使った建物」と、「構造計算をしっかり行い、鉄筋とコンクリート厚さを確保した基礎に120㎜の寸法の構造用集成材と1級合板、強度の高い接合金物を使った建物」と比較するならば、一概に言えませんが、100m2程度の建物で100万円~150万円くらいの費用が変わるイメージです。

仮に建築の総費用が2500万円とするならば、その4~5%程度の差で、一生において家族の命を守る安心な家ができると考えると、それを高いと思うか安いと思うかはそれぞれの価値観であるかもしれません。

 

 

構造躯体は、キッチンやお風呂、内装や外壁などのように、住んでからリフォームなどでやり替えられるものではありません。建物の一生を決めてしまう部分ですので、この部分はしっかりと吟味して、優れた安心なものを使ってほしいと切に思います。

text.後藤俊二(住宅コンサルタント)