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4.222015
ソーシャル・キャピタルが、強い社会をつくり出す。
山内幸治さん
やまうち・こうじ●NPO法人『ETIC.』理事・事業統括ディレクター。早稲田大学教育学部卒業。在学中の1997年、ETIC.に参画し、長期実践型インターンシップを事業化。早稲田大学やNEC、経済産業省などさまざまな機関と連携し、若者がチャレンジしていく環境づくりに取り組んできた。東日本震災からの復興に取り組む人たちの後方支援を担うため2011年3月14日に「震災復興リーダー支援プロジェクト」を発足。同年5月より復興リーダーの「右腕派遣プログラム」や「みちのく復興インターンシップ」「みちのく復興事業パートナーズ」など、復興に関わる多数の事業を手がけている。www.etic.or.jp
NPO法人ETIC.が、復興支援のために立ち上げた
東北のリーダーを支援する「右腕プログラム」。
現在まで200名以上の「右腕」が東北へ向かい、
地域復興に力を添えた。人と人とのマッチングに見る、
災害からの復興と、新しい社会づくりのカタチ。
ソーシャル・キャピタルが、
強い社会をつくり出す。
社会起業家を育てるNPO法人として、長期実践型インターンシップや起業支援をはじめとする様々なプログラムで、若い世代のチャレンジを支えてきた『ETIC.』。東日本大震災ののち、被災地に対して行ったのも、その得意分野である「人材」という面での支援だった。
「震災後、被災地では『人』という課題が大きくなることが予想され、そこに我々のスキルを発揮すべきと感じました。そこですぐに協力企業を探すとともに、3月下旬からは避難所を回り、どんなことが求められているのかを調査しました」と語るのは、ETIC.理事・事業統括ディレクターの山内幸治さん。
まずは、高齢者や乳幼児とその親など、特にスペシャルなニーズのある人々のもとへ、ボランティア団体を週単位で送り込むという活動がスタートした。そしてこれが形を変え、現在まで続いているのが、「震災復興リーダー支援プロジェクト」のひとつ「右腕プログラム」だ。
リーダーを支える、
右腕を派遣する。
「右腕プログラム」は、被災地で復興に取り組み、事業やプロジェクトを立ち上げる人(リーダー)に、その右腕となるべき人材を合流させる仕組みで、ETIC.は、現地リーダーと右腕のマッチングや活動中のサポートを行ってきた。
「2011年6月から、『東北のリーダーを支える右腕』の募集を始めました。復興のフェーズで支援する対象は変わっていきましたが、昨年からは今後も地域に残っていく事業への支援を中心に行っています。その事業がハブとなり、さらなる活動を誘発するような」と山内さん。
「目的と内容が明確な案件には、いい人材が集まる」と、応募のあった案件から復興支援に対するポテンシャルの高い事業、地域への波及力や役割があり、新しい地域、社会をつくるにふさわしい団体を見極めてきた。
「同じ被災地でも、新しい事業が生まれやすい地域があります。なぜ、そんなことが起きるのか。その土地に、豊かなソーシャル・キャピタルがあるからです」。
山内さんのいうソーシャル・キャピタルとは何だろう?「人と人、つまりリソース同士が近い距離にあるということです。たとえば、町長と町民が電話一本で話ができる関係性。その距離感やスピード感が、起業しやすい町を育むのです。なにも難しい話ではなく、ご近所づき合いだってソーシャル・キャピタルのひとつですよね」。
右腕プログラムは、地方と都市をつなぎ、地元のリーダーを中心に東北に新しい社会を生み出そうとしている。こうした「地方と都市」「事業者(リーダー)と人材(右腕)」のような関係性が全国に網の目のように広がっていれば、災害発生時、そして復興時にもきっと役に立つ。もしも何かがあっても、誰かがすぐに動き出せるし、自身がアクションを起こすときのチカラにもなってくれる。「右腕プログラム」は、そんな社会づくりの道標にもなっているのだ。