地震のココロ構え

検証し、想像力を働かせ、 未来をデザインすること。

2016/06/14

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田村太郎さん

たむら・たろう●兵庫県伊丹市生まれ。阪神大震災で被災した外国人への情報提供を行う「外国人地震情報センター」の設立に参画。また、復興まちづくりのネットワーク「神戸復興塾」事務局長や兵庫県「被災者復興支援会議」委員として阪神・淡路の復興に携わる。2007年に「ダイバーシティ研究所」を設立し代表に。復興庁で復興推進参与も務める。


「人の多様性に配慮した組織や 地域社会づくり」を支援する

田村太郎さんが、 みずからの活動を通じて感じた、 これからの「地震のココロ構え」とは。

防災意識と地域づくりの密接な関係、 そして目指すべき社会について伺った。


「災害時には、日常の課題が増幅され、より顕著になって表れる」と語るのは、ダイバーシティ研究所の代表理事・田村太郎さん。
阪神・淡路大震災から今年で20年、この間、さまざまな形で被災地・被災者の支援を続けてきた。
「たとえば、災害時に高齢者や介護の必要な人たちの避難が遅れてしまうという事象から、高齢化社会やユニバーサルデザインへの対応が充分にできていないという社会課題を見出すことができます。災害時の課題の多くは、私たちの社会が、日常的に抱えている問題です」
だからこそ、社会の仕組みや各自の意識を変え、どんな人にも配慮ある社会を目指すことは、災害時の暮らしの向上にもつながる、と田村さんは考えている。
「日本の防災は、避難所へ行くところまでで終わっています。避難所でも仮設住宅でも、そこにあるのは人の暮らしです。人生には『仮』という時間はないのに、そこでの暮らしの質がなおざりにされている。
残念ながら、厳しい避難生活で、命を落とす人も少なくありません」。日本では、大きな地震のたびに耐震基準は更新され、建物というハードの品質は上がっているのに、避難後の生活というソフトはアップデートされていない。

地域単位でデザインする 事前復興。

「少子化で小・中学校の統廃合が進むなか、多くの自治体で避難施設に指定されている学校の数が減っています。東日本大震災直後に、私がおじゃました岩手の避難所では、体育館に役場の機能から遺体安置所までが集まり混乱し、悲惨な状況でした。避難生活を支える物資も、毛布は毛布、水は水……と山積みにされ、配ろうにも人手が足りない。もしこれら物資が一人分ずつのパッケージとしてデザインされていたら、もっと配りやすかったはず。些細なことかもしれませんが、これは阪神・淡路でも、東北でも起こったことで、検証と少しの想像力があれば更新できていたはずなんです」
検証し、想像力を働かせてデザインする。これは田村さんが災害支援を重ねて見出した、「防災」に対するアプローチの一つだ。
「地域を点検したり、物資の備蓄や避難所のあり方を見直すことは、その地域が抱えている課題を浮き彫りにしてくれます。これは『事前復興』とも言われますが、普段からそういった課題の一つひとつを解決し積み重ねていくことこそが『備え』であり、未来に対する『減災』になる。そして、これは顔のわかる人同士、隅々にまで配慮も行き届く地域という小さな単位でこそ有効だと思います」。
「防災」は、よりよい地域社会をデザインすることでもある。自分や家族を守るため、地域を守るためにすべての人が活躍できる社会づくりが、その地域の未来を拓いていくのだ。

 

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