コラム 地震のココロ構え

その地域にあった、 システムを持つべき。

2016/06/14

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水谷伸吉さん

みずたに・しんきち●1978年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、2000年より㈱クボタで環境プラント部門に従事。2003年よりインドネシアでの植林団体に移り、熱帯雨林の再生に取り組む。2007年に坂本龍一氏の呼びかけによる森林保全団体「more trees」の立ち上げに伴い、活動に参画し事務局長に就任。森づくりをベースとした国産材の利用促進のほか、カーボンオフセットや地域活性化なども手掛ける。


国内外で森づくりと地域づくりに携わる 水谷伸吉さんが行っている、地域にある森の資源を活用した復興支援。新しいものをつくり出すなかで気づいた、 震災への備えに必要なものとは……。防災意識と地域づくりの密接な関係、 そして目指すべき社会について伺った。


その地域にあった、 システムを持つべき。

「東日本大震災の発生直後から、自分も行動しなければ、支援活動の専門家ではない自分たちにできることは?と考えていました」。
 そう話すのは、『more trees』の水谷伸吉さん。
『more trees』では、「森づくりは地域づくり」として、森林保全からはじまる地域活性、環境保全活動を行っている。その専門性をどう復興支援に生かすか考えた末に、辿り着いたのが木造仮設住宅の建築だった。しかし、「僕らの計画でたとえ建てることになっても、木材は自力で運ぶしかないと思っていました」と話すように、課題の多い状況であった。  一方、岩手県・住田町では、すでに木造仮設住宅の計画がスタートしていた。住田町では、町の資源である森林を生かし震災以前から災害時の支援に備えて、木造仮設住宅建築の構想を進めており、国や県の施策を待たずに3月14日に町長が建設の指示を出していたのだ。
 水谷さんは、自分たちの構想と同様の支援活動の存在を知り、3月下旬に住田町に行くと、すでに1軒目の木造仮設住宅の基礎が出来上がっていた。
「まず建築図面がある。そして森、製材所、工務店と建築のリソースがすべて整っていました」。"地域にあるもの"は、とても強い。
結果的に『more trees』では『LIFE311』プロジェクトとして、木造仮設住宅の建設費3億円の資金調達と、東北の厳しい冬を過ごすための、仮設住宅サイズにあったペレットストーブの導入に協力することになった。

復興支援が、町を、人を、 産業を元気にする。 

「電気やガスが止まってしまう。東京でさえガソリンスタンドに行列ができる……震災後の燃料不足、エネルギー問題は大きな課題だと感じました。化石燃料一辺倒じゃない、サブシステムが必要です。そこでペレットストーブはうまく機能しました。住田町にはペレットの製造工場があり、エネルギーを地産地消することも可能でした」
 それまで、豊かな森林資源をもつ東北地方でも、ペレットストーブを使う家庭は少なかったそうだ。ところが、仮設住宅での実績が、新たな需要を呼び込んだ。
「住田町のペレット生産量も、その後、増加しました」。
地域がもつ資源や技術を生かした復興支援。それが、地域産業の雇用・活性化にもつながる。あらゆる側面から地域を元気にする仕組みが出来上がった。
結果的に、
「沿岸部からの避難者で、住田町に住民票を移した方もいらっしゃるそうです」。
 「森林資源がベースの住田町のケースがどの地域でも活用できるわけではありませんが、手法は違っても、地域性を生かす方法は何かあるはず」。
そこにある資源、根付く技術や知恵。そんな地域が持つ宝ものを見つめ直すことが、自然災害にも強いシステムをつくっていくのだ。

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