コラム 地震のココロ構え

エネルギーは、「自分でつくる」という選択肢がある。

2016/06/29

_MG_2721上岡 裕さん

かみおか・ゆたか●栃木県佐野市生まれ、在住。2000年3月、環境情報発信を中心とするNPO法人『エコロジーオンライン』を設立。環境省(Re-Style、環のくらし、エコアクションポイント)、林野庁(木づかい運動)などの政府系国民運動の委員を務める。現在は福島での再生可能エネルギープロジェクト支援や、ナノ発電所ネットワーク、『里山エネルギー』株式会社を通して太陽エネルギーの認知の向上と省エネの普及に取り組んでいる。


栃木県に拠点をおきながら、インターネットを有効に活用し、

環境問題について考え、活動する。

2000年にスタートした、『エコロジーオンライン』が、

東日本大震災後から取り組む「タイニーライトプロジェクト」。

その主軸となる「ナノ発電所」に注目してみよう。


エネルギーは、「自分でつくる」という選択肢がある。

「大震災で経験した困難のひとつに、停電がありました。小さな電気を自分でつくることができたら、災害時の初動ももう少しスムーズなはず」と話すのは、NPO法人『エコロジーオンライン』理事長の上岡裕さん。東日本大震災発生直後より、ソーラーパネルとバッテリーを搭載したトラックを被災地へと走らせる活動をしていた上岡さんは、岩手県大船渡市に行った際、「津波のあとの夜、暗いところを歩くのが不安だった」「小さな光でもあったら」という被災者の声を聞き、「タイニーライト・ナノ発電所」のアイデアを思いついた。

タイニーライト・ナノ発電所は、重さ2・5キロの小型バッテリーと60× 50センチ程度の小さなソーラーパネルを組み合わせた、自分だけの小さな発電所だ。「これさえあれば、誰でも簡単に電気をつくれます」。7万5000mAhのバッテリーを搭載したナノ発電所は、停電時でも、携帯電話70台の充電が可能。私たちの暮らしに欠かせないスマ「ートフォンやタブレットが災害時に使えれば、情報収集・拡散、外部とのコミュニケーションができるようになるのはもちろん、小さなライトにもなる。

「メガソーラーなどの大きな発電所も増えていますが、安全設計上、停電になると止まってしまいます。そんなときは、平時に蓄電していたナノ発電所が住民に電気を供給したり、発電を行えます」。メガソーラーにはメガソーラーの、ナノ発電所にはナノ発電所にしか担えないことがある。そのため、メガソーラーを設置するコミュニティでも、非常用にナノ発電所を導入する事例が増えているという。

自然エネルギーが災害時の頼りになる。

異常気象が続く近年は、防災・減災について考える機会が増えている。自然エネルギーはそんな災害時、生きるために頼りになるもの。上岡さんは現在、ナノ発電所をはじめ、太陽熱で調理ができる「ソーラークッカー」、薪やペレットで効率よく火力エネルギーを生み出す「ロケットストーブ」などのグッズとともに、自然エネルギーへの理解を深めてもらうべく、さまざまな活動を行っている。災害時にエネルギーがあれば、光を確保したり、暖を取ったり、調理して食べたり、生きるために必要なことができるようになる。

「同じエネルギーでも、熱エネルギーが欲しいときには、火を使うほうが効率がいいし、音や光には電気のほうが使いやすい」と上岡さんが話すように、エネルギー源の多様化、分散化こそが、これからの時代の防災のココロ構えになる。

ナノ発電所で電気をつくってみると、小さな明かりの大切さに気づくはずだ。そして、少ない電力しかないとき、何を優先して生きるかを見直すことになるだろう。

「エネルギー問題は、非常時でも平時でも現代社会の大きなテーマ。一気に解決する方法はありませんが、一人でも多くの人に、自然エネルギーの可能性、使い方を伝えていきたいです」

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