コラム 地震のココロ構え

震災時の課題(issue)を、デザイン(design)で解決する。

2016/06/14

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筧 裕介さん

かけい・ゆうすけ●1975年生まれ。一橋大学社会学部卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科修了。東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。1998年株式会社博報堂入社。2008年山崎亮氏他とソーシャルデザインプロジェクト issue+design を設立。以降、社会課題解決のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。グッドデザイン賞など、国内外の受賞多数。著書に、『ソーシャルデザイン実践ガイド』『地域を変えるデザイン』など。


「デザインの力で、人に訴えかけ、
気持ちを動かして、社会の課題を解決する」。
ソーシャルデザインプロジェクト『issue+design』の
筧裕介さんが手がけた「できますゼッケン」の役割と、
そこから見えてくる「デザインの力」について。


震災時の課題(issue)を、
デザイン(design)で解決する。

社会の課題を解決するためのデザインに取り組む『issue+design』の筧裕介さん。2008年の設立時、最初に取り組んだ社会課題は「震災」だった。「震災は日本人には身近な問題であり、かつ世界に貢献できるテーマだと考えました。なかでも大地震のあとに訪れる避難生活の期間は、まだ多くの課題があるため、その領域に絞って『震災+design』プロジェクトをスタートさせました」。
当時は阪神・淡路大震災から15年が経ち、社会的にも防災への意識はとても低かった。その中で、デザインで社会貢献をしたい学生が集まり、被災者へのインタビューなどのインプットを経て、課題解決のためのデザインを提案した。そこで生まれた「スキル共有カード」は、被災者の趣味やスキルを書き込んだIDカードで、被災者同士の会話や助け合いのきっかけとなるコミュニケーションツールだった。そして、3年後の2011年。東日本大震災で、このカードは「できますゼッケン」として実用化されることになる。

震災から10日後。
できますゼッケン完成。

「震災直後から『震災+design』での取り組みは、必ず活かせると考えていました」と筧さんは振り返る。そして、2008年当時に阪神・淡路大震災の被災者から、「ボランティアの人が『スキル共有カード』をつけていたら、何をお願いできるのか分かりやすい」と言われたことを思い出し、ボランティア用へのリデザインに着手。サイズ、付け方など数々の視点から変更と検証を繰り返した。ゼッケンの完成、実用化までに要した時間はわずか10日。3月21日には、ウェブ上に公開された。「2008年の経験があったからこそ、スピード感をもって行動することができました」と筧さん。
完成した「できますゼッケン」は、スキルのタイプにより4色に色分けされ、そこに「手話」「掃除」など個人のスキルが大きく書き込まれる。A4コピー用紙に出力し、背中にテープで貼るだけのシンプルなものだが、誰に何を頼めるのかがひと目でわかる。「『できますゼッケン』をつけた人からは、『被災者の方から話しかけられました』という声をいくつも聞きました」。
またこのゼッケンは、自分のスキルを自分で書き込むため、「自分にできること」を見つめ直すことになる。一枚のゼッケンは、被災者とボランティアをつなぐだけでなく、それぞれの活動への意識を高めるツールとしても機能するのだ。
「スキルの共有」は震災だけでなくこれからの地域社会でも大きな課題だが、「できますゼッケン」は、被災者とボランティアの間にあったコミュニケーションの難しさの本質を捉え、それを整理した。ここに、デザインの力がある。「ゼッケンは、震災で起きる問題の一部を解決したに過ぎません。しかし皆が日常的に地震のことを考え、課題に向き合い、解決策を想像・創造──つまりデザインをすることが、地震にまつわる社会課題全体を解決していくのです」。

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